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人気イラストエッセイスト 犬山紙子さん書き下ろし パートナーへの感謝の伝え方 関係性を育ててくれる栄養素は Thanks Days platinum

「休んでくれてありがとう」がこれまでかけてもらった「ありがとう」の中で強く印象に残っている。
それは私が赤ちゃんの育児と仕事でボロボロになっていた時に夫がかけてくれた言葉。当時は無理をしているのに、自分では「まだまだやれるはず」と思い込んでいた。でも、早々に仕事復帰し、仕事先のトイレでシュコーシュコーと搾乳をし、カップに入った母乳をトイレに流している姿を鏡で見た時。「ああ、もしかするとこれは私無理しているのかもしれない」と気がついたのだった。赤ちゃんが飲むためではない、私が乳腺炎にならないために3時間に1度搾乳をして捨てる。それをやらないと、おっぱいは岩のようにガチガチに固くなり、高熱が出るからだ。家だと搾乳したものは冷凍してミルクの代わりに使えるけれど、外で出した母乳は捨てるしかない。この、母乳を捨てるのは体力的にも精神的にも辛かったのだ、ああ私の血液、私のエネルギー。

そうして仕事から帰り、涙目で「今日はもう寝る!」と宣言した時、夫がそう声をかけてくれたのだった。無理をしていたと言うが、私はワンオペ育児ではなかった。夜の授乳もミルクを併用して夫と交代制にしていたし、日中の赤ちゃんのお世話だって「女性は出産で体に大ダメージを受けているんだから、僕がやる!」と、夫は私以上にやっていた。夫もしんどかったはずだ。しかも「お互い休みたくなったら休もうね」と声を掛け合っていた。それでも、結局無理をしてしまう。育児ってそういうものなのかもしれない、小さな弱い命を守り通さなければいけないのだから。

あの時夫に「ありがとう」と言われ、自分の体がとても尊いものだと思えたことを覚えている。育児中は自分の体は基本後回しで、そんなことは忘れていた。何度も高熱を出す原因となるやっかいなおっぱいも「私のおっぱい頑張ってて偉い。うーむ、おっぱい界のノーベル賞だな」といった塩梅で愛おしく感じる。妊娠後期にギチギチに痛めた腰だって頑張りものの腰だ。ヘルニアだけはもう再発してほしくないけれども……。そうやって、自分の体を尊いと思えた私は、仕事相手に搾乳をしていることを話してみた。すると「言ってくれてありがとう。私もその時期本当に大変だったわ〜、部屋を用意するからね」と、女性スタッフさんが動いてくださったのだ。結局は母乳を捨てることになるが、人の優しさに触れた後、トイレでない場所で搾乳できることに救われる思いだった。

自分の体や心を大切にすることに対して「ありがとう」と誰かに言ってもらえるのは、「愛している」と同義、もしくは「愛している」よりも私には響くのだ。

そこから私はそれを真似をするようになった。相手が体を大切にしていたらありがとうを伝える。歯医者にクリーニングに行くだけで「偉い、偉すぎる。ありがとう」という具合だ。予定より寝過ごして自分を責めている夫にだって「それだけ体を休ませてくれてありがたい」と言う。そう言えるのは、自分がそう言ってもらった積み重ねからでもある。

私が夫にありがとうと言う時も考えてみる。それは朝食を当たり前のように作ってくれた時だったり、日々子どもを保育園に送り迎えしてくれたことだったり、私の仕事が上手く行ったのを一緒に喜んでくれた時だったり、誕生日に加齢を肯定的に捉えて祝ってくれた時だったり。日常から非日常まで様々でそれぞれ違うけれど、共通しているのは「(私を尊重してくれて)ありがとう」だということだった。

「ありがとう」と「相手を尊重すること」はとても密接なのだ。

夫とは結婚して8年。私からするともうそんなに経ったのかと思うが、まだまだこの先が長いんだろう。8年間の間にも大変なことや辛いこと、乗り越えられないんじゃないかと思う夜もあった。でもそれはどこのカップルだって同じではないだろうか。仕事柄、様々なカップルを取材してきたけれど毎日ひたすら円満です、という人に出会ったこともない。だからこそ、どうすればお互い心地よく過ごせるのかみな知恵を絞っている。「話し合いの時は手をつなぎながらする」カップル。「決して人前でパートナーを卑下しない」カップル。「数字で評価されない家事に対して、毎日感謝を述べる」カップル。「交換ノートをつけてすれ違う日々でも、心がすれ違わないようにする」カップル。関係性は生き物であり、手をかけなければ痩せ細り、大事に手をかければ素晴らしいものが出来上がる。関係性の栄養の大きな一つが感謝であり、大事に手をかけたその先にあるのは「生きててくれてありがとう」と互いに思い合えることなのだと思う。

犬山紙子(イラストエッセイスト)

仙台のファッションカルチャー誌の編集者を経て、家庭の事情で退職。20代を難病の母親の介護をしながら過ごす。2011年、女友達の恋愛模様をイラストとエッセイで書き始めたところネット上で話題になり、マガジンハウスからブログ本を出版しデビュー。現在はTV、ラジオ、雑誌、Webなどで粛々と活動中。2014年に結婚、2017年に第一子となる長女を出産してから、児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「こどものいのちはこどものもの」の立ち上げ、社会的養護を必要とするこどもたちにクラウドファンディングで支援を届けるプログラム「こどもギフト」メンバーとしても活動中。その反面、ゲーム・ボードゲーム・漫画など、2次元コンテンツ好きとしても広く認知されている。

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