Platinum Guild International

A HISTORY of PLATINUM JEWELRY

section1 幾何学模様とプラチナ

様式化の純度と洗練でアール・ヌーヴォーを凌ぐガーランド・スタイル。その延長戦上に1910年代半ばから1930年代にかけて流行・発展した「アール・デコ」があります。アール・デコの特徴は、表現の力点が平面に置かれ、曲線より直線が勝り、構成が対照的な幾何学パターンであることです。また、原色による対比表現も大きな特徴といえます。
抽象的でグラフィカル、平面と直線など、ガーランドはアール・デコの基本要素を内包しています。この様式の進化と純化の背景には、ファッション革命もありました。バロック・ドレスに変わるポワレのしなやかなストレート・ラインは、ジュエリーにも軽さを要求したのです。
また、第一次大戦をはさむアール・デコ期には、女性の社会進出が顕著となり、服装もジュエリーも“着用性”が必須の条件とされました。堅牢性(堅さ)と展延性(柔軟さ)を併せ持つプラチナは、あらゆる幾何学的形状も少量で加工することが可能です。小さな爪でしっかりと宝石を固定できることからも、まさに最適な素材といえました。

プラチナにダイヤモンド、サファイアを組み合わせたブレスレット。厳密な幾何学的ラインとクールな色彩感。アール・デコ・スタイルのジュエリーでは、プラチナがそのモダンなデザインを一層強調する。ヴァン・クリーフ&アーペル製。エレーヌボーモン夫人旧蔵、サザビーズ・ジュネーブのオークションより(写真:サザビーズ)。

section2 色彩対比としての「プラチナの白」

アール・デコのもう一つの特徴ともいえる原色による色彩表現でも、プラチナが役割を果たします。アール・デコ以前のファッションやジュエリーの世界では、黒は「喪」のイメージでした。ところが、アール・デコでは、黒が「エレガント」をいう意味を持つようになり、ジュエリーにおいても意識的に使われるようになります。その際、対比表現として用いられたのが「プラチナの白」でした。
また、カルティエにおいてブルーとグリーンといった斬新な色彩の組み合わせを採用するようになったのがこの時代です。ここでもプラチナの白が基調となることで、鮮やかな色彩との対比が生まれました。こうしてカルティエは、アール・デコにおいても時代の先駆者となったのです。

顧客からの特注品として制作されたプラチナ製髪飾り。美しく輝くのは、オールド・ブリリアント・カット・ダイヤモンド。1923年、カルティエ製。

プラチナ製ブレスレット。木の葉模様を彫刻したルビー、中央にブリリアント・カットのダイヤモンドを象眼した球形のサファイヤとエメラルド。葉脈はブリリアント・カット・ダイヤモンドのパヴェ。1930年頃、カルティエ製。

section3 抑制の美学とプラチナ製時計

ジュエリーと並ぶ重要アイテム・時計の世界おいても、最高級モデルとしてプラチナ製の時計が登場しました。ベル・エポック期の見せびらかしの風潮から、第一次大戦後の“狂騒の20年代”を経て、人々は抑制の美学に気付き始めていました。プラチナ製の時計は、現代性の象徴のみならず、ステイタスと洗練された趣味を象徴するものとして歓迎されました。

プラチナ製時計。1920年代以降、時計の分野でもプラチナが積極的に使用される。ブシュロン製(写真:『ブシュロン至高の宝石店4代の栄光』)。